活動から育む心

命のバトンを繋ぐ場所で:保護犬・保護猫シェルター運営支援が教えた共感と利他性

Tags: 動物保護, 保護犬・保護猫, シェルター運営, 共感, 利他性

命のバトンを繋ぐ場所で:保護犬・保護猫シェルター運営支援が教えた共感と利他性

私が保護犬・保護猫シェルターの運営支援ボランティアに関わるようになったのは、ある保護団体の活動報告を目にしたことがきっかけでした。そこには、劣悪な環境から救い出された動物たちの写真と、献身的にケアを続けるボランティアたちの姿がありました。漠然と動物が好きという気持ちはありましたが、具体的に彼らの命を救うための行動を起こすことの重要性を強く感じ、団体の運営支援ボランティアに加わることを決めました。

私の役割は多岐にわたりました。シェルター内の清掃や給餌といった直接的な世話だけでなく、譲渡会の準備、広報資料の作成、一時預かり家庭との連絡調整、寄付された物資の整理など、シェルターを維持し、新たな家族を見つけるための裏方作業が中心でした。活動を始めた当初は、与えられたタスクをこなすことに精一杯でした。しかし、様々な動物たちの背景を知り、共に活動する人々や、動物たちを迎えることを真剣に考える譲渡希望者の方々と関わるうちに、この活動の深さと、そこで求められる心のあり方について考えるようになりました。

特に印象深いのは、ある老犬との出会いです。長年、劣悪な環境で飼育放棄され、心身ともに傷ついてシェルターに保護された犬でした。人間に対する警戒心が非常に強く、近づくだけで震え、目を合わせようとしませんでした。私は主に清掃の時間にその犬のそばを通るだけでしたが、毎日声をかけ続けました。すぐに心を開いてくれるとは思っていませんでしたが、ただ存在を認め、安心できる空間を提供したいという一心でした。

ある日、いつものように声をかけながら清掃をしていると、その犬が初めて、ゆっくりと私の方に顔を向けたのです。そして、微かに尻尾を振りました。それは本当に小さな変化でしたが、私にとっては大きな出来事でした。言葉は通じなくとも、時間をかけて寄り添い、安心感を与えることで、互いの心に通じるものがあるのだと実感しました。この経験を通じて、相手の立場や感情を想像すること、そして焦らず根気強く関わることの大切さを学びました。これは、まさに「共感」という力の原点だったように感じています。

また、運営支援という立場からは、多くの「利他性」の形を目にしました。限られた資金と人手の中で、休みなく動物たちの世話を続けるスタッフやボランティア仲間。自宅の一部を開放して一時預かりをする家庭。厳しい経済状況の中でも、わずかながらも寄付をしてくださる方々。古くなったタオルや毛布を寄付してくださる地域の方々。皆、自分の時間や労力、資源を顧みず、目の前の動物たちのために行動していました。そこには、見返りを求めることのない、純粋な「利他心」がありました。

しかし、活動は常に順風満帆ではありませんでした。懸命なケアにもかかわらず、残念ながら命を繋ぐことができなかった動物たちもいました。多頭飼育崩壊の現場など、助けたくても全てを助けられない現実もありました。そのような現実に直面するたび、自身の無力さを感じ、心が折れそうになることもありました。そのような時、支えになったのは、共に活動する仲間たちの存在でした。悲しみを分かち合い、互いを励まし合い、「今できることを精一杯やろう」と気持ちを立て直す。この、共通の目的のために困難を乗り越えようとする仲間との絆も、利他性が育む大切な側面だと感じています。

学びと内面の変化

保護犬・保護猫シェルターでの運営支援を通じて、私は命の尊厳と、それを守り繋ぐことの難しさ、そして何よりも温かさを学びました。共感する対象は、当初考えていた動物たちだけでなく、同じ志を持って活動する人々、動物を愛する人々、そして様々な事情を抱えながらも命と向き合う全ての人々に広がりました。

利他心は、単に誰かのために何かをするという行動だけでなく、社会的な課題に対し、自分に何ができるのかを考え、行動し続ける強い意志なのだと学びました。そして、その意志は決して孤立したものではなく、他者との共感によって支えられ、育まれるものであることを実感しました。

この活動は、私の内面に大きな変化をもたらしました。以前よりも、日常の中に潜む他者の痛みや困難に気づきやすくなったように感じます。そして、「自分には関係ない」と目を背けるのではなく、たとえ小さなことでも、自分にできることは何かを考える習慣がつきました。それは、保護される動物たちが教えてくれた、命への深い共感と、共に活動する人々が示してくれた、困難の中でも希望を失わない利他心という「心の力」が育まれた結果だと感じています。

結論

保護犬・保護猫シェルターでの運営支援は、単なる作業ではなく、私自身の「心」が大きく成長する機会となりました。命のバトンを繋ぐという重責の中で、共感し、利他心を持って行動することの真の意味を知りました。この経験で育まれた心は、今後の私の人生においても、きっと多くの場面で私を支え、人や社会との関わり方を豊かにしてくれると信じています。この活動で得た学びを胸に、これからも共感と利他性を大切にしながら、様々な活動に関わっていきたいと考えています。