活動から育む心

スキルを力に、心で寄り添う:非営利団体のウェブサイト制作で育んだ共感

Tags: プロボノ, ウェブサイト制作, 非営利団体支援, 共感, 利他性

専門スキルを活かすボランティアとの出会い

私は普段、IT関連の企業でウェブサイトやシステムの開発に携わっております。ある時、自身の専門スキルを社会貢献に活かせないかと考え、プロボノ活動に興味を持ちました。いくつか情報を集める中で、地域で子どもたちの学習支援を行っている小さな非営利団体が、情報発信のためのウェブサイト制作に困っているという話を知りました。その団体は熱意ある数名のボランティアによって運営されており、資金も潤沢ではないため、専門業者に依頼することは難しい状況とのことでした。

私はこれまでのキャリアで培った技術が、誰かの、そして特に未来ある子どもたちの役に立てるかもしれないという可能性に強く惹かれました。これが、私がプロボノとしてその団体のウェブサイト制作に関わることになったきっかけです。

困難の中で見出した共感の形

活動はまず、団体の方々との打ち合わせから始まりました。代表の方は教育に対する強い情熱をお持ちで、子どもたちがいかに多様な困難を抱えているか、そして自分たちの活動がどのような光をもたらしているのかを、目を輝かせながら語ってくださいました。しかし、同時にウェブサイトの必要性を理解しつつも、専門知識がないことへの不安や、日々の活動で手一杯であることへの焦りも口にされていました。

そのお話を伺ううちに、私は彼らの置かれている状況に深く共感しました。資金やリソースが限られている中で、子どもたちのために懸命に活動されている姿、そして情報発信の壁にぶつかっている現実。彼らの情熱と困難の間に立つ中で、私の技術スキルが単なる「作業」としてではなく、彼らの「願い」を実現するための「力」になるのだと感じました。

制作過程では、技術的な知識が全くない方々にウェブサイトの仕組みや必要な情報を分かりやすく説明することに苦労しました。専門用語を使わずに伝える難しさ、そして先方の要望を正確に理解し、形にするための丁寧なコミュニケーションが求められました。時にはこちらの意図が伝わらず、誤解が生じることもありましたが、その都度立ち止まり、なぜ伝わらなかったのか、どうすれば相手に寄り添った説明ができるのかを考えました。

このプロセスは、単にウェブサイトを作る技術的な作業ではありませんでした。それは、相手の立場に立ち、彼らの「困っていること」や「本当に必要としていること」を深く理解しようとする、まさしく「共感」の実践そのものでした。そして、その共感こそが、私の利他心を掻き立てる原動力となりました。彼らの笑顔や、サイトへの期待の言葉を聞くたび、自分のスキルが役に立っているという実感が湧き、さらに「彼らの力になりたい」という思いが強くなっていったのです。

活動から育まれた内面の変化

ウェブサイトが無事公開され、団体の方々から感謝の言葉をいただいた時、私は深い喜びを感じました。それは、技術的な成果物を作り上げた達成感だけでなく、彼らの活動を側面から支え、その願いが形になる過程に共に歩めたことへの満足感でした。

このプロボノ活動を通じて、私は自身の内面に大きな変化があったことに気づきました。以前は自分のスキルをどう向上させるか、どうキャリアに活かすか、という視点が中心でしたが、この経験を通して、「自分のスキルをどう他者のために、社会のために活かせるか」という視点が加わりました。単なる技術の提供ではなく、相手の状況に共感し、その上で自分の提供できる価値を見出すという、利他性の実践の重要性を肌で感じたのです。

また、限られたリソースの中で最大限の成果を出そうと奮闘する団体の方々の姿勢から、粘り強さや創意工夫の大切さも学びました。それは自身の仕事にも良い影響を与え、新たな視点や柔軟性をもたらしてくれました。

スキルと心が織りなす利他性

このウェブサイト制作の経験は、私にとって「活動から育む心」というサイト名が示す通りの、内面的な成長の機会となりました。技術スキルという形は異なれど、ボランティア活動の根底にあるのは、他者への共感と、何か役に立ちたいという純粋な利他心なのだと改めて感じています。

自身のスキルを社会のために役立てたいと考えている方や、活動の中で技術的な壁に直面している方にとって、私の経験が少しでも参考になれば幸いです。形は様々でも、共感を胸に利他の心を持って関わることで、活動はより豊かなものとなり、自身の心もまた確かに育まれていくのだと信じています。